そう?うつ?何それ美味しいの?

~躁とうつの波を穏やかに乗りこなすためのコツ~

「面倒くさい」から卒業する「自信がある人に変わるたった1つの方法」

この本はひとことで言うと「面倒くさいので何もしたくない人と、何をやるにも自信がない人は読むべき」です。私は自分の好きな事以外は、極度にやりたくないと思ってしまうような、面倒くさがりです。料理するのは好きですが、片付けは誰かにやってほしい、そんなタイプです。そういう人が、片付けまでこなせるようになるのがこの本だと思いました。実際、面倒くさがらずに、苦もなくやるようになりました。
何をするにも億劫で「なんで苦労してまでやる必要があるの?」と思って何もしたくない人。また、何をするにも「どうせできないのにやる必要があるの?」と思って何もできない人。思考の入り口は異なりますが、行動は同じです。そのため、前者である私にも有用な本だと思いました。

 ざっくり本書の内容を知りたい方は下記リンクもご覧ください。

元自衛隊メンタル教官が教える 「折れてしまう」原因は、ストレスではなく◯◯だった 〈dot.〉|dot.ドット 朝日新聞出版

 

あらすじ

はじめに

本書を読むべき人を章別に分類しています。

  • 読む以前 いまは休養すべき 10%
  • 9章 基礎トレーニングから 10%
  • 8章 目標で変化 20%
  • 7章 評価の改善で変化 20%
  • 1〜6章 価値観を変えるだけで後は自分で変化 40%

と、本は自信のない方からすると、逆順で構成されています。9章から読んでも良いのですが、全部を読み切れる方は1章から読むことをおすすめします。

1〜6章 うつのメカニズム

  • 自信がない人の特徴は、自分を甘やかさない、我慢強い、妥協しない、自己満足しない、優しい、人の嫌がることをしない、自律できる、深く考えるなど、「優れた人、良い人」である。
  • 我々はスーツを着た原始人であり、人間としての本質は同じである。うつの症状は、原始人として当たり前の防御的な意味を持つ。例えば、食欲が低下するのは、食料を探すより、単純に危険から自分を守る方法である。誰かが食料を取ってきてくれればよい。
  • 自信低下の一番の原因は「うつ」。誰でもやれること、できることでも「多く重なる」と、精神的エネルギーが低下する。原始人はエネルギーが低下すると、行動を起こさないように、疲労感を強め、意欲や興味を低下させる。
  • 他人に言われて「自分探し」をする人は、日本人的短期目標をもつ人。伝統的であり、西洋人的長期目標が持てる人ない。稲作文化を営んできた日本人が、共同作業、みんなと同じという感覚があるので、悪いことではない。
  • 真面目な人ほど、「がんばれば子供の頃みたいに、大きな成長ができる」と思っていて、いつまで経っても自己満足できない状態になってしまう。程度をわきまえて「自分に無理な要求をしない人」「現実路線をとる」など、あるべき論から離れて、「小さくてもできたこと」に注目することが必要である。

7章 自分の行動の良いところ探しによる自信の付け方

  • サイコーの評価法を用いて、1日1回振り返る。振り返りポイントは①良かったところを3つ挙げる(部分成果、プロセス成果、副次効果)②悪かったところ③今後の改善点(例は感想にて)
  • メモを通じて振り返る昨日はなんとなくいい1日になる。積み重なると充実した過去と、明るい未来に繋がる。
  • 良い所探しの初期はなかなか出てこない。まずは、なんでもいいので1分間に周囲で良い物を20個挙げてみる。例えば、コーヒーが美味しい、PCの画面が明るい、マウスのデザインがいいなど、ひたすら挙げてみる。

8章 適切な目標設定と評価方法による自信の付け方

  • 「無意識目標」は無意識のうちに設定している期待値レベル(程度)が高く、これが評価基準になる。
  • 目標には「適切な程度」の設定が必要でり、「合格目標」と「おまけ目標」に分解する必要がある。
  • 最低限できればOKな「合格目標」があれば、それ以上は、できたらラッキーな「おまけ目標」と認識できるようになる。これができれば、理想を追い続けることから脱せる。
  • 「合格目標」は、全くできそうにない0から、確実にできる10まで段階を分け、3〜7程度にしてみると良い。
  • 目標設定が上手になるには、「今日の目標」を具体的に意識できる目標として毎日設定してみる。目標ポイントは①仕事②健康③成長④人間関係⑤楽しみ+特定の長期目標(例は感想にて)

9章 回復期初期の自信の付け方

  • 基礎体力が低下しているので、1〜8章までをやることは難しい。
  • 「呼吸法」を課題としてチャレンジする。
  • 呼吸そのものにも「無意識目標」は存在する。
  • 「うまくいかなかった」と思うようなら期待値レベルが高い。合格目標の設定が必要である。

感想

この本は私の重い腰を上げるのに、いままでで一番良かったと思える本です。
現時点ではまだ休職中なのですが、現状は回復期はとうに過ぎて、社会復帰可能な状態です。しかし、7章、8章の基礎トレーニングから必要でした。
「純粋に面倒くさいのでやりたくない」という労力からの逃げ、「完璧に出来ないのはやりたくない」という非完全性からの逃げが、やるべき物事から自分を遠ざけていました。
「軽症うつ病」によると、急性期から寛解期の中間にある回復期には「不安・いらいら→ゆううつ感→おっくう感」という状態があるそうです。「なるほど確かにその通りだ」と納得して、何もしていませんでした。でも、その何もしない私は怠け者ではありません。「おっくう≠怠け者」なのです。

軽症うつ病 (講談社現代新書)

軽症うつ病 (講談社現代新書)

 

この本で学んだ、合格目標、おまけ目標という考え方は、私にとって衝撃でした。私なりの表現をすると、合格目標は「他の人に怒られない最低ラインのやること」で、おまけ目標は「自己満足でやっていること」となります。例えば、プレゼン資料を作るときに、PowerPointで、私はフォントや図形がきっちり揃ってないと嫌なので、1枚1枚綺麗に整え、参考資料はどんな質問でも対応できるように抜け漏れなく時間の限りに準備していました。これを合格目標に置き換えると、資料は「手書きのメモ」まで一気に落ちます。質問されても、ホワイトボードと口頭で大体説明できます。

この例から分かるように、いかに自分の無意識下で、とんでもない高さのハードルを設定しているかを知ることができました。しかも、数値化することで、主観的にぼんやりとした目標から卒業し、7であれば楽勝な目標、5であればできるかどうかの目標、3であればかなりチャレンジングな目標、と客観的な数値の目標の世界に入ることができました。(数値の妥当性は試行錯誤によって決まります)
1〜6章の「誰でもやれること、できることでも『多く重なる』」という部分については、下記ストレスチェックから実感してみてください。キラーストレスに気付くきっかけになるかもしれません。

hidezipo.hateblo.jp

毎日のルーティーン

あらすじで書いた、今日の目標、サイコーの評価法を毎日日記で記録しています。
これを続けることで、「家事をしなくても死なないから大丈夫」と思っていた自分が、三食作って、掃除もできるようになりました。人って変われるものなんですね。
最初は下記から始めました。

  • 最低限、ノート1ページに日付だけは書く。
  • 一行、今日出来たこと(よかったこと)を書く。
  • できれば、朝昼晩食べたもの、体調を書く。

この日記が順調になってきたところから、徐々に下記を書くようになりました。

  • 目標①仕事②健康③成長④人間関係⑤楽しみ+特定の長期目標
  • 評価①良かったところを3つ挙げる(部分成果、プロセス成果、副次効果)②悪かったところ③今後の改善点

これを続けて、以下のような事も記録して、気分や体調の波を把握しています。生活記録表などよりも具体的に知ることができて、自分には合っていると感じています。

  • 良いことも悪いことも発生したイベント
  • どんなことにストレスに感じたか
  • ストレス解消として何をしたか
  • どんなことが嬉しかったか

ある1日の例

目標は以下の通りです。

  • 仕事:メールを読んだら、後回しにせずにすぐ返信する
  • 健康:5000歩 歩く
  • 成長:小説を50ページ読む
  • 人間関係:昼食でAさんと雑談をする
  • 楽しみ:ゲームを1時間やる
  • 特定の長期目標:Aさんと仲良くなる

ここで注意が必要なのですが、初期は必ず成功する目標を設定した方がいいです。「できなかった・・・」と思うと、残念な1日になってしまいます。とにかくつまらないことでも、必ず成功することを目標にしましょう。

サイコーの評価法は

  • 部分成果:1日のゲーム時間を計画通り1時間に出来た(良い部分のみ挙げて書く)
  • プロセス成果:タイマーを使って1時間を計った(どのように部分成果にたどり着いたか)
  • 副次効果:時間を守る意識が身に着いた(自分の成長に注目する)
  • 悪かった点:TVをだらだら見ていて、寝る時刻が遅くなった
  • 改善する点:寝る時刻が分かるように、タイマーをセットする


これらを通じて「できる」と感じ、「できること」が増えました。それが「自信」になって、「他のこともやってみたい」と思うようになりました。そして、それが「できる」と感じ・・・という流れで今があり、こうやってブログまで書くようになりました。ここまで半年くらいですね。


今振り返ると「なんでも面倒くさいのに、ひとつできると思うだけで変わる」なんて話は、狐につままれたような気持ちになります。しかし、小さな一歩一歩が底堅い自信を作り上げ、しっかりとした土台になり、そこにさらにできることが増えていく、その感覚は間違いなく私の中に存在しています。それが、寛解してから、後戻りしないために必要な智慧なのではないかと思いました。